夫の両親と2世帯住宅に住んでいる。義父が自分で会社を営んでいることもあり、家にはリビングの隅に大きな金庫が置いてある。夜間は事務所と家を締め切ってしまうため、泥棒に入られても気づかない可能性があったから、仕方なくリビングに置くことになったのだけど、これが邪魔でしかたない。なにせ300kgもある大型金庫なので、物理的に私達家族の動線に割り込むことになる。慣れた今ですら、3日に一度は誰かが金庫に足の小指をぶつけて悶絶しているという、はた迷惑な居候である。どうしてそんなに大型の金庫を購入することになったかというと、義父が用心深い性格のため、簡単には持ち運べない防盗効果のある金庫が欲しかったからだそうだ。

そんな金庫だが、やはりその場所に置いておくのは防犯的にはよくても家族の安心にとってはよろしくないということになり、移動することになった。金庫が置いてあった場所にはガラスケースの飾り棚を設置し、義父の趣味であるボトルシップや義母の趣味である紙粘土作品を飾るそうだ。私は特に何も飾るものがないけれど、これからはあの足の小指をぶつける痛みとは遠ざかることができると思うと、やはり嬉しい。と、思ったのも束の間、私たちは大問題に直面した。はて、この金庫、どうやって動かそう。金庫の周りで大の大人が4人、ものの3分は沈黙していただろうか。私と義母は持病の腰痛があるため戦力外である。夫と義父が二人がかりで動かそうとしたものの、金庫はわずかに場所をずらしただけであった。便利屋や引っ越し業者にお願いするという手もあるが、値段もそれなりにかかる。再び私たちに沈黙が訪れた…。

結局、金庫は元あった場所にそのまま置かれることになった。そして相変わらず我が家では、3日に1度は誰かが悶絶する声が聞こえている。こんなことは決して口にしてはならない。ならないけれど、大きな声で言いたい。「誰か、この金庫盗んでくれ!」